スロヴェニアからの帰途、経由地のパリで一泊し、ホテル近くのスーパーに立ち寄りました。そうだ、小麦粉コーナーも覗いてみよう。
さすがは、フランス。そこには数多くの種類の小麦粉が並んでおりました。大学生のとき第二外国語はフランス語でしたが、強力粉と薄力粉の区別もできない自分を情けなくなりつつも、それでもひとつひとつ丁寧に眺めていると、ホームベーカリーのイラストが入ったパッケージがあるではないですか。
Francine(フランシーヌ)という会社から、「mon pain maison」、つまり、「おうちパン」なるシリーズが出ておりました。これは、ホームベーカリーですぐ使えるようにブレンドされた、ミックス粉のシリーズなのです(もちろん、手で捏ねて、オーブン焼きしてもいいわけですが…)。
Fransineは、フランスで最大手の小麦粉メーカーだそうですが、「Pain Maison」(プレーンなパン)、「Pain de Campagne」(田舎パン、カンパーニュ)、「Multi Céréales」(雑穀入りパン)、「Brioche」(ブリオッシュ)、「Pain de Mie」(食パン)等々、種類もいろいろありました(詳しくは、こちら)。
日本でも、富澤商店などに行くと品数が多く、パン用のミックス粉も少しはありますが、街角のふつうのスーパーが、これほど充実していることに、目を見張りました。
もちろん、小脇にバケットを抱えていくパリっ子たちともすれ違いましたし、頬っぺたの落ちるパン屋さんだって、そこにはゴマンとあることでしょう。ですが、ひょっとすると、当地でも、「ホームベーカリー=ロボさん」も、けっこう流行っているのかな? このマシーンは、電気釜でご飯を炊く背景があるから、日本でとくに広まったんだと思っていたけれど、ヨーロッパでも「ロボさん愛好家」が増えつつあるのでしょうか。それとも、主に、手で作る人が買っているのかな?
試しに、「Pain de Campagne」を一袋、買ってみました。もっとたくさん欲しかったけれど、運ぶのがたいへんなので…。1.5キロ入りで日本円なら300円ちょっと。正確な訳語かどうか心配ですが、中身はどんなブレンドになっているのか、辞書を引いてみました。
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farine de blé(小麦粉)、farine et son de seigle(ライ麦粉)、gluten de blé(グルテン)、levain de seigle désaclive(ライ麦酵母?)、dextrose(ぶどう糖)、émulsifiant:E472e(乳化剤:E472e)、agent de traitement de la farine: acide ascorbique(小麦粉処理剤?: アスコルビン酸)、enzymes(酵素)、Traces éventuelles d'œuf, de soja, de sesame et de fruit à coque(微量の卵、大豆、ゴマ、ナッツ)
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小麦粉とライ麦粉をベースにしつつ、なんだかとっても凝った調合みたい。卵や木の実の粉末を入れることで、コクを出そうとしているんでしょうね。
帰国後、もちろん、焼いてみました。食べてみました。やっぱ、美味しーいの、これが! カンパーニュに関しては、料理書を叩き台に自己流のブレンドも試しているんですが、このミックス粉はとっても完成された味と香り。なんていうか、舌の落とし所にパシッとハマってく、「大人の味わい」。自然とパンを噛み締めたくなる…。
これまで持っていたミックス粉に関する先入観をうち砕かれました。ホットケーキミックスやチョコレートケーキミックスなど、買ったことがあるけど、やっぱりそれは調合をサボっただけの価値な味でしたが、これは違う。ホームベーカリーがさかんなお国柄なのだから、日本のスーパーでも買えるようになるといいのになあ!
パッケージを念入りに眺めると、ポイントシールが付いていました。集めて送ると、かわいいイラスト入りのブリキ缶がもらえるよう。あちらの国でもこういうのをマメに集める人たちがいるんだな。一枚、一枚、皺の寄った手で鋏を入れ、年期の入ったキャンディーボックスに大事に貯めてるおばあちゃんなど、いるんじゃないかしら…。勝手に想像するうち、なんだか親しみが湧いてきます。
でも、いまのご時勢です。もしかしたら通販で買えるかもしれない…。
アマゾンで検索しましたが、残念ながらヒットしません。楽天で検索すると、粉の方は見当たらないのですが、なんと、そのブリキ缶が売っていました。けっこうなお値段ですけど。
なんで、オマケが買えて、中身はダメなんだろう。うーん、不条理であります。
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